山崎阿弥/ライブ情報など
by amingerzz
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カテゴリ:●物語( 4 )
頁の微笑
くぐもった蛍光灯の流した汗を誰がぬぐうのか。

夜の隙間から流れ出た光のよだれを首に感じて振り仰ぐと、街灯の光が濁って見えた。閉店したばかりの呑屋が小火を出している。消防車の赤いランプが回り、雨の中に何かが燃えた臭いが混じっている。

そういう夜、旅の空の恋人を想う。
意味もなく自分がいる街の夜に耳を澄ましたりする。
ふいに隣室からボーンと低くワインボトルの栓を抜く音がした。中国のおとぎ話のように、名前を呼ばれて返事をすると中に吸い込まれて酒になってしまうひょうたんを思い出し、壁の側で身を縮めた。夜はどんな虚も現実と結んでしまうようで怖い。

ああそうか、名前って何だろう?
君を知っていれば君の名前は「○○の仕事をしていて、××に住んでいる、△が好きな人・・・」と君の記述と記録の代替だけど、君を知らなければ、君の名はそれしか喋れない鳥の鳴き声みたいだ。

私はオウム返しに君の名を呼ぶ、心の中で。

眠る前、君の部屋から拝借した本の中に君を探す鬼ごっこ、私は微笑む鬼になる。君が引いた線や折ったページを見つけるたびに、心に星が灯るような幸せを感じる。

始まるということは終わるということだと気付いてから、私は微笑を止めることが出来なくなった。それは、崖っぷちに立って海を覗き込んだ恐怖を軽減するために、身体の中のDNAだか脳だかがさせる儀式のような微笑だろうか、否、知ってしまった真実の深さがあまりにも深く、悲しみと喜びが綯い交ぜになり、泣かないための平衡を保っていたら、ずっと、微笑が終わらなくなったのだ。
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by amingerzz | 2009-11-01 21:32 | ●物語
熱い耳
起き抜けに触れた耳は、指がひりひりするほど熱かった。

こんな耳をして、あなたはいったい、夢の中で何を聞いているの?

私の指に熱を移し取るように耳のふちをなぞると、一緒に触れた髪が柔らかくたわんで元の位置に戻った。彼の髪はどんなに揺れても元の流れに従順に戻る。一見固そうに見えて素直なその髪を、私は何度も不思議に眺めてきた。起きていても眠っていても彼は私が見つめていることに気付いていないようだった。

ふいに、家族が二人ずつ違う苗字になったここ数年のことを思った。母と妹、父と私。母の旧姓との組み合わせで出来る名前は全く私ではなかった。父のことは憎んでいたけれど苗字を使い続けることは厭わない、手続きも面倒だ。

彼は昨晩言った。「あなたが母親や妹とかわす電話の端々に嫉妬してたんだ。実を言うと」。若い頃に両親とも他界した彼には記憶の家族しかない。かと言って何も弱々しいものなどはない、と人に言えるほどには彼の心は片付いている。しかし、記憶の家族は何にもまして強く刻まれていて、記憶を読み出すたびに深い気持ちになる。「私には私固有の記憶と経験があるから」と同情をやさしく拒みながら涙ぐむ、涙ぐむとき彼はいつも「実を言うと」と、自分自身に告白するように私の方を見る。
彼はその後間もなく眠りにつき、すぐに目覚め、まだ起きていた私に今見た夢を話した。「君の乳房を剥ぎ取ったよ」。夢とも現実ともつかないような一行を残して、また眠りに落ちた。私は切り取った乳房を耳にあて貝殻から海の音を聞くように目を閉じる彼を想った。耳が、内側から熱くなったように感じた。




この項つづく。
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by amingerzz | 2009-11-01 21:31 | ●物語
自転車・銀杏
自転車を翻して枝ごと折れた銀杏の葉を拾う。あて先を思い描いて葉を選び、アルファベットの判子で葉に手紙を書く。封筒に入れて色鉛筆で葉脈をなぞる。ポストに飲み込ませるとき、どうして「間違えた」という気がする?旅行の直前に何かのっぴきならないことが起こって、旅行に出なくても良くならないかと何かを待つ気分に似ている。書くまでは心躍るのに送る段になって我に帰る。我に帰る?手紙とは狂うことなのか。旅とは旅に行くまでが旅そのものを従わせているのか。それはどういうことなのか、それを問うことを止めた証拠につぶった目をこじ開ける。まぶたに四人の小魔人が手をかけて号令する。自分の愛情の重さは軽さ。こじ開けられた目玉に触る光が鈍い。ここ数日、初夏らしからぬ寒さに合わせてか昨日までの快晴がさびた曇りになっている。
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by amingerzz | 2009-05-16 07:52 | ●物語
■むごんの1じかん 01
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by amingerzz | 2001-01-01 01:01 | ●物語