山崎阿弥/ライブ情報など
by amingerzz
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頁の微笑
くぐもった蛍光灯の流した汗を誰がぬぐうのか。

夜の隙間から流れ出た光のよだれを首に感じて振り仰ぐと、街灯の光が濁って見えた。閉店したばかりの呑屋が小火を出している。消防車の赤いランプが回り、雨の中に何かが燃えた臭いが混じっている。

そういう夜、旅の空の恋人を想う。
意味もなく自分がいる街の夜に耳を澄ましたりする。
ふいに隣室からボーンと低くワインボトルの栓を抜く音がした。中国のおとぎ話のように、名前を呼ばれて返事をすると中に吸い込まれて酒になってしまうひょうたんを思い出し、壁の側で身を縮めた。夜はどんな虚も現実と結んでしまうようで怖い。

ああそうか、名前って何だろう?
君を知っていれば君の名前は「○○の仕事をしていて、××に住んでいる、△が好きな人・・・」と君の記述と記録の代替だけど、君を知らなければ、君の名はそれしか喋れない鳥の鳴き声みたいだ。

私はオウム返しに君の名を呼ぶ、心の中で。

眠る前、君の部屋から拝借した本の中に君を探す鬼ごっこ、私は微笑む鬼になる。君が引いた線や折ったページを見つけるたびに、心に星が灯るような幸せを感じる。

始まるということは終わるということだと気付いてから、私は微笑を止めることが出来なくなった。それは、崖っぷちに立って海を覗き込んだ恐怖を軽減するために、身体の中のDNAだか脳だかがさせる儀式のような微笑だろうか、否、知ってしまった真実の深さがあまりにも深く、悲しみと喜びが綯い交ぜになり、泣かないための平衡を保っていたら、ずっと、微笑が終わらなくなったのだ。
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by amingerzz | 2009-11-01 21:32 | ●物語
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